理事長ご挨拶

一般社団法人日本臨床薬理学会 理事長
景山 茂
(東京慈恵会医科大学教授)
日本臨床薬理学会は、1969年、動物実験による薬理学的知識はヒトでたしかめられた上で臨床に応用すべきであるとの立場に立ち、科学的基盤に立脚する薬物治療学を目指し、また、新薬の臨床評価の重要性を認識して設立された「臨床薬理学研究会」を前身としています。11年後の1980年に研究会を発展的に解消し本学会が設立されました。
その後、臨床薬理学研究は幾多の変遷・進歩をして来ました。新薬開発では、combinatorial chemistryの手法により極めて多くの化合物が合成できるようになり、これを効率よくスクリーニングするhigh throughput screeningが行われています。また、分子標的治療薬の開発は新薬開発において重要な位置を占め、現在は、マイクロドース臨床試験や分子イメージングの手法が導入されつつあります。また、実験室の研究では、薬物代謝酵素やトランスポーター等に関する研究に大きな進歩が見られました。
一方、1990年代にはEBM(evidence-based medicine)が強調され、efficacyのみでなく、effectivenessとりわけtrue endpointの検証が求められるようになりました。21世紀に入り、我が国においても大規模なランダム化比較試験が行われ、日本人のエビデンスが報告されるようになりました。
勿論、安全性の把握の重要性は言うまでもなく、このためには適切な観察研究が必要です。このように臨床薬理学には、explanatory trialの早期探索試験から、true endpointを検証するpragmatic trial、更には観察研究まで広範囲の研究が求められています。これらの広範な研究に対応していくことが本学会の重要な役割と考えております。
1997年の新GCP施行後、臨床試験の基盤整備に本学会は大きな役割を果たして来ました。その代表例は臨床研究コーディネーター(clinical research coordinator, CRC)の導入です。現在では、CRC抜きの臨床試験は考えられず、臨床試験の適正な施行に貢献しています。また、学会の体制としては一般社団法人となり、会員数も3,000人を超えるまでに発展しました。
21世紀になり早くも10年が過ぎました。本学会の先達の努力により整備された臨床試験の基盤を利用して、優れた研究成果を発信していくことこそ、今後の私たちに課せられた仕事であると思います。
折しも本年は第32回日本臨床薬理学会年会の折に、初めて日韓米による「JSCPT-KSCPT-ASCPT Joint Conference 2011」が開催されます。これを我が国における臨床薬理学研究の弾みとして、大きな飛躍(秘薬)が得られるよう努力していく所存であります。会員の皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。
